インテークとは?
インテークは、介護支援専門員が利用者と初めて向き合う場面で行われる初回面接です。ここで得られる情報や関係性が、その後のケアマネジメント全体を左右します。利用者の状況や希望を知り、その方に合った支援を組み立てるための“はじめの一歩”がインテークです。
インテークの目的と役割
インテークには、大きく分けて以下の目的があります。
利用者の背景把握
利用者の生活状況や身体状態、家族構成、経済的状況などを整理します。たとえば、一人暮らしなのか同居の家族がいるのか、特定の疾患を抱えているかなどを確認し、支援内容の方向性を検討するための基礎情報とします。課題の抽出
本人や家族が感じている困りごと、解決したい問題が何なのかを探っていきます。ここでは、単に「体が不自由」という言葉にとどまらず、具体的に「入浴時の安全確保」や「トイレへの移動負担の軽減」など、生活場面を想定した課題を洗い出すことが重要です。信頼関係の構築
利用者とケアマネジャーとの間で互いを理解し合い、安心感を育むための大切な機会です。初回面接のときに抱きやすい緊張感や不安を和らげるよう、ゆっくりしたペースで話を聞き、利用者の言葉にしっかり耳を傾ける姿勢が求められます。
インテークとアセスメントの違い
インテークとアセスメントはどちらも利用者の情報を収集・分析するステップですが、狙いやタイミングに違いがあります。
項目 | インテーク | アセスメント |
---|---|---|
目的 | 基本情報を収集し、利用者との関係を築く | 抽出した課題やニーズをさらに詳しく分析し、ケアプランに反映させる |
タイミング | 初回面接 | インテーク終了後、ケアプラン作成の前 |
主な活動 | 利用者と対面してのヒアリング、生活環境の確認など | 課題の優先度を整理し、ケア方針・サービス内容を具体化する |
インテークが“情報をざっくりと集めて信頼関係を築く”段階だとすると、アセスメントは“集めた情報をより深く分析してケアの方向性を定める”段階といえます。両方がうまく回ることで、利用者に適切なサービスを提供できるようになります。
インテークの具体的な流れ
インテークはどのように進めればよいのでしょうか。以下では、面接前の準備から面接時の標準的な進行までを見ていきます。
インテーク開始前の準備
事前情報の収集
ケアマネジャーが事前に把握できる利用者情報を確認します。既往歴や要介護認定の状況、利用者が希望するサービスの大まかな内容などがあれば整理し、面接中に追加で質問すべき内容を洗い出しておくとスムーズです。面接環境の整備
面接する場所の確保や、プライバシーに配慮した空間づくりが重要です。利用者が同席者を望む場合は、家族や関係者も参加しやすいスペースを選ぶなど、細かい配慮が必要です。必要な資料の準備
面談用のメモ用紙、ボイスレコーダー(必要に応じて)、チェックリストなど、事前に用意しておくべき物をリストアップします。急に資料を探し回ったりしないよう、万全な状態で面接を迎えることが大切です。
インテークの標準的な手順
自己紹介と守秘義務の説明
はじめに、ケアマネジャーとしての役割や守秘義務をわかりやすく伝えます。利用者に安心して話してもらうためにも、「ここで話された内容は他に漏らさない」という姿勢を明確に示すことが大切です。基本情報のヒアリング
名前や年齢、介護度、生活歴などのベースとなる情報を聞いていきます。同時に、どのような経緯でケアマネジャーに相談することになったのか、利用者自身の言葉で話してもらうことも有益です。生活状況・課題の確認
食事や入浴、排せつ、移動などの日常生活動作だけでなく、趣味や楽しみにしていること、社会とのつながりなども尋ねます。「生きがい」や「楽しみ」の部分を聞くことで、その人の生活全体の質を向上させるためのアイデアが見えてくる場合があります。利用者の希望・ニーズをまとめる
「困っていることは何か」「どのようなサービスを期待しているか」など、利用者の考え方や希望を具体的に整理します。たとえば、週に何回ヘルパーを利用したいのか、施設への通所を希望するのか、訪問リハビリを受けたいのか、といった項目についても質問を行います。面接内容の記録と次へのステップ提示
インテーク中のやり取りを記録し、今後の方針を利用者と共有します。次回の訪問日や追加の調査事項などを明確にして、利用者が不安なく過ごせるように道筋を示します。
インテークにおける注意すべきポイント
インテークを円滑に進めるには、利用者が安心して話せる雰囲気をつくり、ケアマネジャーは積極的に耳を傾ける姿勢を示すことが求められます。
利用者との信頼関係の構築
言葉遣いと態度
専門用語はできるだけ噛み砕き、利用者が理解しやすい言葉を使います。高齢者の場合、聴力や視力、理解力の低下があることも少なくありません。はっきりした声で、ゆっくりとしたペースで話をするなど、相手に合わせたコミュニケーションが重要です。傾聴と共感
話を促すために積極的な相づちや質問を挟みながら、利用者が「話を受け止めてもらえている」という安心感を得られるよう配慮します。相手の話を途中で遮らず、「なるほど、そうだったのですね」と受け止める姿勢を見せることで、深い情報を引き出すことができます。秘密保持の徹底
インテークで聞き取った情報は、ケアマネジャーの守秘義務に基づいて管理されます。利用者や家族に対しては、情報が第三者に漏れることはないと伝えることで、リラックスして話してもらいやすくなります。
利用者の自己決定を尊重
意見を引き出す工夫
「どのような支援があれば助かりそうか」「何がいちばんの問題だと思うか」など、具体的な質問を投げかけます。利用者自身が自分の意見を言葉にすることで、実際のケアに反映させやすくなります。強制にならない支援
ケアマネジャーは「こうしたほうが良い」と一方的に決めるのではなく、利用者の気持ちを尊重したうえで提案を行います。たとえば、「週に1回デイサービスに行きましょう」ではなく、「デイサービスに行くと、こういったメリットがありますが、どう思われますか?」といった形で確認していく姿勢が大切です。
インテークでつまずきやすいケースと対処法
インテークは重要なプロセスですが、利用者の状況やタイミングによってはスムーズに進まないことがあります。ここでは、よくあるつまずきのパターンと対処法を紹介します。
話をしてもらえない場合
原因
初対面の相手に、プライベートな情報を話すことに抵抗がある場合や、ケアマネジャーに対して不信感を持っているケースが考えられます。過去に他の機関やスタッフとのコミュニケーションで嫌な思いをした経験がある方は、特に慎重になるかもしれません。対処法
時間をかけて自己紹介や守秘義務、ケアマネジャーの役割を丁寧に伝え、安心感を与えることが大切です。また、焦らずに挨拶や世間話からゆっくりと話を広げていくことで、徐々に信頼を獲得していく方法も有効です。
家族と意見が合わない場合
原因
利用者本人が望む支援内容と家族が望む支援内容が異なることがあります。家族が過剰に口を出し、本人の希望がないがしろにされるような状況も起こりやすいです。対処法
利用者の自己決定を尊重しつつ、家族の気持ちも否定せずに聞き取ります。双方の意見を「どちらが正しい」ではなく「どのようにすれば折り合いがつくか」という観点で整理し、最終的に利用者本人が納得できるゴールを目指します。
時間が足りないと感じる場合
原因
インテークで聞き取りたいことが多く、時間内にすべて把握しきれないと感じるケースはよくあります。特に新人ケアマネジャーや利用者の状況が複雑な場合、一度の面接だけでは把握しきれない可能性があります。対処法
まずは優先順位を考え、最初に確認すべき項目を明確にします。もし時間が足りないと感じるなら、次回の面接を早めに設定するなどフォローアップの計画を立てます。一度で全部を把握しようとせず、段階的に確実な情報を集めていく方が結果的にスムーズです。
インテークに関する研修やリソース
インテークの進め方や注意点は、研修や公式ガイドラインなどで体系的に学ぶことができます。必要に応じて最新の情報をキャッチアップしておくことが、質の高いケアマネジメントの実現につながります。
公的機関のガイドライン
下記のような公的機関が提供する資料やガイドラインは、制度の最新情報や実務のヒントを得るうえでも役立ちます。
リソース名 | 提供元 | リンク先 |
---|---|---|
ケアマネジメントの基本研修 | 厚生労働省 | 公式サイトリンク |
厚生労働省の公式サイトでは、介護保険制度やケアプラン作成に関する最新の情報が公開されています。インテークを含むケアマネジメント全体の流れや研修内容を把握する際に、参考になる資料が豊富です。
まとめ
インテークは、ケアマネジメントの基盤となる重要なプロセスです。利用者との信頼関係を構築し、的確な情報を収集することで、質の高いケアプランの作成が可能になります。
インテークの進め方やコミュニケーションのポイントを日々の実践に落とし込んでいくと、利用者に寄り添ったケアをより具体的に提案できるようになります。新人のケアマネジャーはもちろん、経験を積んだ方でも、改めてインテークの重要性を見直すことは大変意義のあることです。利用者の方に安心感を持ってもらいながら、必要な情報を正確に得るためにも、本記事で紹介した内容を参考に現場で取り組んでみてください。